KTF(旧)

オーストラリア生まれの Keep The Faith (※引退)など、海外で走るサンデーサイレンス産駒の情報を記録していました。

種付け頭数をウイニングポストの血統支配率風に表す(豪州編・後)

オーストラリア編の後半では、マイナー父系の注目種牡馬を一気に取り上げていきます。(馬名のリンクはPedigree Queryによる血統表)

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ハイペリオン系>
父系としては衰退著しく、このオセアニアが最後の砦というべき状況。Star KingdomとForliの2系統が生き残っています。オーストラリア独自のラインとして発展したStar Kingdomの系統には20頭ほどの現役種牡馬がいますが、多くは年間一桁の種付けにとどまっているようです。例外的に頭数を集めているのがShow a HeartToorak ToffのG1馬親子で、特に後者は108頭と大台を超えており次世代への期待が高まります。一方、Forliの末裔では、2014年から種牡馬入りしたSpirit of Boomがいきなり154頭の牝馬を集める人気種牡馬となっており、こちらも注目の存在です。

<プリンスローズ系>
この系統も他地域ではほとんど見なくなりましたが、オーストラリアではMossmanがG1・6勝のスプリンターBufferingを出すなど成功しており(Bufferingは残念ながらセン馬)、まだまだ生き残っていきそうです。Mossmanの産駒であるLove Conquers Allも、手頃な種付け料もあってか181頭もの牝馬を集め人気となっています。Love Conquers Allも現役時代はスプリントの重賞路線で活躍した馬でした。オーストラリアで父系を繁栄させるには、短い距離できっちり実績を上げていくことが重要だと言えます。

ブランドフォード系>
オーストラリア独自のラインは繋がっていないようですが、欧州から移籍しメルボルンC等を制したFiorente(父Monsun)が初年度から186頭もの牝馬を集めています。メルボルンC勝ち馬ながら1600mのG2勝ちもあり、スピードを示せていることが人気の要因でしょうか。また、Glacial GoldGold Bold and Richという米国生まれの2頭の種牡馬が供用されていますが、どちらもGold Bayou T Bという種牡馬を父に持っており、Pedigree Queryを見るとどうやらサラブレッドでは珍しいパロミノ(月毛)として代々続いてきた系統みたいです。さすがに重賞勝ち馬は出ていないようですが、2頭とも毎年それなりの数の牝馬を集めています。

ネアルコ系>
ニアークティックノーザンダンサー、ロイヤルチャージャー、ナスルーラ以外のネアルコ傍系はほぼ淘汰された感がありましたが、オーストラリアではNearco〜Infatuation〜Showdown〜The Judge〜Zeditaveというラインがしっかり生き残っています。Zeditaveは自身がG1を5勝、種牡馬としても多数の活躍馬を送り出し成功しました。その産駒Magic Albertが複数のG1勝ち馬を輩出して代表的な後継となっています。ただ、Magic Albertの後継として種牡馬入りしたG1馬Ilovethiscityは種付け頭数が伸び悩み気味で、もう一代、二代とラインを継承できるか少し気になる状況。

マンノウォー系>
欧州からシャトルされているDream Aheadが100頭以上の牝馬を集めています。同じウォーニングの系統で自国産の種牡馬もいますが、種付け数は極僅か。

トムフール系>
高松宮記念に来襲したAerovelocityの父Pinsで存在を知った人も多いと思われる(自分もですが)、Tom Fool〜Silly Season〜Lunchtime〜Snippetsと続くオセアニア土着のライン。本流の(?)バックパサー系も先行きがかなり怪しいので、残っていくのはこちらの方かもしれません。Pinsはニュージーランドで供用されており、オーストラリアにおける代表種牡馬はSnippets産駒のSnippetsonになります。(Snippets-onなのかSnippet-sonなのかどちらでしょうか)

ニアークティック系>
日本でもおなじみノノアルコの末裔がいました。香港スプリントを連覇したFalvelonと、その産駒Walking or DancingNearcticNonoalco〜Noalcoholic〜Alannon〜Falvelon〜Walking or Dancingと続いています。

トウルビヨン系>
三大父系生き残りをかけ、正念場のトウルビヨン系。オセアニアにおいては、Better Boy〜Century〜Rubitonと成功が続き代を繋いできましたが、その次が出てこず存続が危ぶまれる状況です(Rubiton産駒の活躍馬がほとんどセン馬だったのが惜しまれます)。2014年シーズンは確認した限りで7頭の種牡馬が供用されていましたが、どれも種付け数は少なく、Masterprintの27頭を除けばあとは一桁ばかりでした。そのうちの1頭、Beau Chezzは日本にはもういないリュティエ系の種牡馬になりますが、残念ながら2015年に死亡してしまった模様。しかしその産駒で2006年生まれのHigh Perchがどうやら2015年シーズンから種牡馬入りしているようです(おそらく未出走で、系統の希少価値を見込んだプライベート供用の可能性が高い)。リュティエ系の種牡馬ってほかの国ではまだ残っているんでしょうか。

<ヒムヤー系>
北米で一子相伝的に続いてきた父系。現在オーストラリアでは、アメリカの2歳G1勝ち馬Wicked Style(父Macho Uno)が輸入されて唯一供用されているようです。今のところリステッド勝ち馬1頭を出すにとどまっている模様。

<シャーペンアップ系>
アイルランドからの輸入種牡馬やその産駒が少数供用されていますが、特に活躍馬は出ていません。

レイズアネイティヴ系>
上と似たような感じですが、こちらはG2、G3の勝ち馬が若干出ています。

<フェアウェイ系>
欧州でももはや滅亡状態(?)とみられるフェアウェイ系ですが、オーストラリアでは米G1馬Honor in Warや香港の国内G1を勝ったSuper Kidなど4頭が供用されていました。しかしどれも活躍馬が出ないまま年齢を重ねており(4頭とも1990年代の生まれ)、このままだとオーストラリアでも滅んでしまうことになりそうです。

<ダマスカス系>
Bagger Vance(父Gilded Time)は100頭以上牝馬を集めた年もありましたが、目立った産駒は出ていないようです。

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さすがは馬産大国オーストラリア、マイナー父系好きの心を刺激する種牡馬が次々と出てきました。日本もこうであって欲しかったと思います・・・。もはや手遅れですが。
本シリーズは、最後に世界No.1の生産頭数を誇る北米編をやって締めくくりたいと思っています。きっと欧州にもオセアニアにもいない独自系統の種牡馬が見つかるはずです。ただ、集計対象の種牡馬が1,400頭以上いるので、出来上がるのはいつになることか・・・。10頭/日のペースで調べるとして数ヶ月。下手すると次の年の種付け頭数が先に発表されてしまうかもしれません。そうならないように少しずつでも時間を見つけて調べていこうと思うので、読んでくれている方がいたらどうか気長にお待ちいただければと思います。