種付け頭数をウイニングポストの血統支配率風に表す(豪州編・後)
オーストラリア編の後半では、マイナー父系の注目種牡馬を一気に取り上げていきます。(馬名のリンクはPedigree Queryによる血統表)
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<ハイペリオン系>
父系としては衰退著しく、このオセアニアが最後の砦というべき状況。Star KingdomとForliの2系統が生き残っています。オーストラリア独自のラインとして発展したStar Kingdomの系統には20頭ほどの現役種牡馬がいますが、多くは年間一桁の種付けにとどまっているようです。例外的に頭数を集めているのがShow a HeartとToorak ToffのG1馬親子で、特に後者は108頭と大台を超えており次世代への期待が高まります。一方、Forliの末裔では、2014年から種牡馬入りしたSpirit of Boomがいきなり154頭の牝馬を集める人気種牡馬となっており、こちらも注目の存在です。
<プリンスローズ系>
この系統も他地域ではほとんど見なくなりましたが、オーストラリアではMossmanがG1・6勝のスプリンターBufferingを出すなど成功しており(Bufferingは残念ながらセン馬)、まだまだ生き残っていきそうです。Mossmanの産駒であるLove Conquers Allも、手頃な種付け料もあってか181頭もの牝馬を集め人気となっています。Love Conquers Allも現役時代はスプリントの重賞路線で活躍した馬でした。オーストラリアで父系を繁栄させるには、短い距離できっちり実績を上げていくことが重要だと言えます。
<ブランドフォード系>
オーストラリア独自のラインは繋がっていないようですが、欧州から移籍しメルボルンC等を制したFiorente(父Monsun)が初年度から186頭もの牝馬を集めています。メルボルンC勝ち馬ながら1600mのG2勝ちもあり、スピードを示せていることが人気の要因でしょうか。また、Glacial GoldとGold Bold and Richという米国生まれの2頭の種牡馬が供用されていますが、どちらもGold Bayou T Bという種牡馬を父に持っており、Pedigree Queryを見るとどうやらサラブレッドでは珍しいパロミノ(月毛)として代々続いてきた系統みたいです。さすがに重賞勝ち馬は出ていないようですが、2頭とも毎年それなりの数の牝馬を集めています。
<ネアルコ系>
ニアークティック+ノーザンダンサー、ロイヤルチャージャー、ナスルーラ以外のネアルコ傍系はほぼ淘汰された感がありましたが、オーストラリアではNearco〜Infatuation〜Showdown〜The Judge〜Zeditaveというラインがしっかり生き残っています。Zeditaveは自身がG1を5勝、種牡馬としても多数の活躍馬を送り出し成功しました。その産駒Magic Albertが複数のG1勝ち馬を輩出して代表的な後継となっています。ただ、Magic Albertの後継として種牡馬入りしたG1馬Ilovethiscityは種付け頭数が伸び悩み気味で、もう一代、二代とラインを継承できるか少し気になる状況。
<マンノウォー系>
欧州からシャトルされているDream Aheadが100頭以上の牝馬を集めています。同じウォーニングの系統で自国産の種牡馬もいますが、種付け数は極僅か。
<トムフール系>
高松宮記念に来襲したAerovelocityの父Pinsで存在を知った人も多いと思われる(自分もですが)、Tom Fool〜Silly Season〜Lunchtime〜Snippetsと続くオセアニア土着のライン。本流の(?)バックパサー系も先行きがかなり怪しいので、残っていくのはこちらの方かもしれません。Pinsはニュージーランドで供用されており、オーストラリアにおける代表種牡馬はSnippets産駒のSnippetsonになります。(Snippets-onなのかSnippet-sonなのかどちらでしょうか)
<ニアークティック系>
日本でもおなじみノノアルコの末裔がいました。香港スプリントを連覇したFalvelonと、その産駒Walking or Dancing。Nearctic〜Nonoalco〜Noalcoholic〜Alannon〜Falvelon〜Walking or Dancingと続いています。
<トウルビヨン系>
三大父系生き残りをかけ、正念場のトウルビヨン系。オセアニアにおいては、Better Boy〜Century〜Rubitonと成功が続き代を繋いできましたが、その次が出てこず存続が危ぶまれる状況です(Rubiton産駒の活躍馬がほとんどセン馬だったのが惜しまれます)。2014年シーズンは確認した限りで7頭の種牡馬が供用されていましたが、どれも種付け数は少なく、Masterprintの27頭を除けばあとは一桁ばかりでした。そのうちの1頭、Beau Chezzは日本にはもういないリュティエ系の種牡馬になりますが、残念ながら2015年に死亡してしまった模様。しかしその産駒で2006年生まれのHigh Perchがどうやら2015年シーズンから種牡馬入りしているようです(おそらく未出走で、系統の希少価値を見込んだプライベート供用の可能性が高い)。リュティエ系の種牡馬ってほかの国ではまだ残っているんでしょうか。
<ヒムヤー系>
北米で一子相伝的に続いてきた父系。現在オーストラリアでは、アメリカの2歳G1勝ち馬Wicked Style(父Macho Uno)が輸入されて唯一供用されているようです。今のところリステッド勝ち馬1頭を出すにとどまっている模様。
<シャーペンアップ系>
アイルランドからの輸入種牡馬やその産駒が少数供用されていますが、特に活躍馬は出ていません。
<レイズアネイティヴ系>
上と似たような感じですが、こちらはG2、G3の勝ち馬が若干出ています。
<フェアウェイ系>
欧州でももはや滅亡状態(?)とみられるフェアウェイ系ですが、オーストラリアでは米G1馬Honor in Warや香港の国内G1を勝ったSuper Kidなど4頭が供用されていました。しかしどれも活躍馬が出ないまま年齢を重ねており(4頭とも1990年代の生まれ)、このままだとオーストラリアでも滅んでしまうことになりそうです。
<ダマスカス系>
Bagger Vance(父Gilded Time)は100頭以上牝馬を集めた年もありましたが、目立った産駒は出ていないようです。
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さすがは馬産大国オーストラリア、マイナー父系好きの心を刺激する種牡馬が次々と出てきました。日本もこうであって欲しかったと思います・・・。もはや手遅れですが。
本シリーズは、最後に世界No.1の生産頭数を誇る北米編をやって締めくくりたいと思っています。きっと欧州にもオセアニアにもいない独自系統の種牡馬が見つかるはずです。ただ、集計対象の種牡馬が1,400頭以上いるので、出来上がるのはいつになることか・・・。10頭/日のペースで調べるとして数ヶ月。下手すると次の年の種付け頭数が先に発表されてしまうかもしれません。そうならないように少しずつでも時間を見つけて調べていこうと思うので、読んでくれている方がいたらどうか気長にお待ちいただければと思います。
種付け頭数をウイニングポストの血統支配率風に表す(豪州編・前)
前回の英・愛編から3ヶ月経ってしまいましたが、ようやくオーストラリア編ができたので公開します。
【集計方法】
Australian Stud Book(http://www.studbook.org.au/)の「Stallions standing in Australia」で参照できる、2014年の供用種牡馬一覧から1頭ずつ種付け数と血統を確認しました(2015年の一覧もあるが、現時点では種付け数のデータが完全ではない)。対象となった種牡馬は617頭、種付け数の合計は19,200頭でした。種付け数の1/4弱は、サイト上でシャトルスタリオンとして扱われている種牡馬による数字です(ここで言うシャトルには北半球→南半球と南半球→北半球の両方が含まれる)。ただし、シャトルされる種牡馬は流行の父系が幅広くラインナップされており、集計結果に大きな影響が出てはいないようです(=シャトルスタリオンを除外しても勢力分布に変わりはない)。
なお、Australian Stud Bookで個々の馬情報を見るには年間でAUS$37.95(約3,200円)を払う必要があります(10年位前は無料でしたが・・・いつから有料になったかは知りません)。ほかに調べる手段も無さそうなので払いました。サイトの内容は、JBISサーチとジャパン・スタッドブック・インターナショナルがセットになったようなものだと考えていただければと思います。
全体的には英・愛と似た傾向ですが、「デインヒルによる寡占がより顕著」、ただし「生産頭数が多い分、系統のバリエーションは豊富」という二面性が見られるのが特徴と言えます。「全体の2/3がノーザンダンサーで、うち半分がデインヒル」これって十分異常なんだと思うのですが、日本や英・愛の結果を見てからだとさほど違和感なく受け入れてしまいそうです。一方で、他地域では途絶えてしまった系統にもそれなりの頭数を集めている種牡馬がおり、マイナー父系ファンを喜ばせてくれそうです。系統ごとに見ていきます。
<ダンジグ系>
1頭ずつ血統を調べていた時はとにかくデインヒルばかりで、もしかして50%超えてるんじゃないかと錯覚するくらいでした。実際は35.9%だったので日本におけるサンデーサイレンスとほぼ同じくらい。デインヒル系の中ではRedoute's Choiceの勢力が圧倒的で、50頭以上の後継種牡馬がいます。欧州でも産駒が活躍しているFastnet RockやExceed and Excelがそれに続きますが、Redoute's Choiceからは大きく水を開けられています。非デインヒルの系統で目立つのはペルジノ(サドラーズウェルズ・フェアリーキングの半弟)で、安田記念にも出走したTesta Rossaから複数の後継種牡馬が出ていました。
<ノーザンダンサー系>
フェアリーキングの後継として大成功したEncosta de Lagoには20頭近い後継種牡馬がいました。トライマイベスト系のWritten Tycoonはラストタイクーンの孫にあたります。つい先日ゴールデンスリッパー勝ち馬のCapitalistが出たばかり。世界的な退潮が心配されるニジンスキー系ですが、豪州で生き残っているのはほぼロイヤルアカデミーIIの子孫だけ。ただBel Esprit・Mosheの親子は100頭以上の牝馬を集める人気種牡馬のようで、Black Caviarに続く大物の登場が期待されるところです。
<ヘイルトゥリーズン系>
Halo〜Southern Haloの系統とRoberto〜Red Ransomの系統にほぼ二分されている状況。サンデーサイレンス系は直子が多数シャトルされていた時代が過ぎ、現在供用されているのは3頭、G1馬Trast in a Gustを出したKeep the Faithも2014年の種付け数は39頭と今ひとつ振るいません。先日リアルインパクトのシャトルが発表され、これで再び勢いがつくか注目です。
<ミスタープロスペクター系>
オーストラリアの重賞結果を見ているとStreet Cry産駒の活躍が目立ちますが、2014年のシーズン前に死亡してしまっているので本集計結果には反映されていません。後継のStreet Bossがシャトル供用され、父同様人気を集めているようです。
<サーゲイロード系>
オセアニアが誇るZabeel〜Octagonal〜Lonhroの父系。調べてませんが、父Redoute's Choice、母父Zabeelみたいな血統の馬がオーストラリアには溢れかえっていそうです。
<ナスルーラ系>
シャトル種牡馬を除くと人気のある種牡馬はあまりいません。若干ブラッシンググルーム系が多いかな?という程度。特筆すべきは、Nasrullah〜Rego〜Baguette〜Crown Jester〜Rory's Jesterと、オーストラリア土着の父系が細々と続いていることで、これはぜひ残ってほしいところです。Rory's Jesterの血はビービーガルダンの母系などに見られますが、おそらく日本にはほとんど入っていない系統だと思います。
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長くなりそうなので残りの系統は後半に回します。マイナー父系ファンなら見逃せない注目種牡馬が結構いますのでどうぞご期待ください。
サラ系の子孫は滅亡寸前 (3) ミラ系
全3回の突発企画、最後を飾るのは真打のミラ系。「サラ系」の象徴ともいうべき一族です。
【ミラ】
1895年生まれ、オーストラリアから輸入。自身も横浜ダービーやジャパンセントレジャーといった当時の大レースを制した一級の競走馬だったが、産駒の第二ミラ・第三ミラを通してその血脈は大いに発展し、国内有数の牝系となった。第二ミラの子孫にはワカタカ(東京優駿)、第三ミラの子孫にはシーエース(桜花賞)、ヒカルイマイ(皐月賞・東京優駿)、ランドプリンス(皐月賞)がいる。約100年の歴史で、繁殖入りした牝馬は確認できただけでも400頭を超えており、これはバウアーストツク系やバイカ系の約3倍の規模となる。しかし、時代を経るにつれ徐々に活躍馬は少なくなり、JRAの重賞勝利は1991年の福島記念(ヤグラステラ)が最後となっている。
■牝系図(現役馬に繋がる分のみ)
ミラ 1895
第三ミラ 1912
|第三ミラノ四 1920
| オールファスト 1932
| スズマサコ 1943
| スズミドリ 1960
| メリーサン 1972
| シローメリー 1986 → ボスイモン 2008(牡、地方12勝)
|龍玉 1928
安俊 1939
ムールドカール 1947
ミスカツクモ 1953
ハナカイドウ 1967
ヤグララナー 1979
ドラゴンルーブル 1990
ビッグティアラ 2001 → カブヤマジョオー 2011(牝、地方6勝)、タイムオブレディー 2013(牝、地方3勝)
トウケイルーブル 2009 → トウケイドラゴン 2013(牡、中央未勝利)
現役競走馬:4頭
現役繁殖牝馬:2頭(ビッグティアラ、トウケイルーブル)
ほか、ビッグティアラの産駒に2014年生まれ(牝)、2015年生まれ(牝)、トウケイルーブルの産駒に2014年生まれ(牝)、2015年生まれ(牡)がいる。今年2016年も、2頭とも出産予定の模様。
第二ミラの子孫は、2014年までフナツという牝馬が笠松で走っていたものの、同馬の引退により断絶してしまったようです。現在は第三ミラの末裔で、ヤグラステラの半妹ドラゴンルーブルの子孫だけが繁殖牝馬として残っており、その血を次代に繋げるべく奮闘している状況です。ただ、2頭とも毎年順調に産駒を残しており、特にトウケイルーブルはまだ初子がデビューしたばかりで非常に若く、滅亡寸前というのは適切でないかもしれません。再びミラの名を競馬界に轟かせるような産駒の出現を期待したいところです。現3歳で佐賀所属のタイムオブレディーは今月、重賞・花吹雪賞で3着と好走しており、近いうちのタイトル獲得も夢でないかもしれません。
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全3回で取り上げた以外のサラ系一族には、血統不明の輸入馬以外にも19世紀のアラブ種に遡る系統や、日本の在来種の血を引く系統などが残っていましたが、20世紀末から2000年代にかけて次々と途絶えてしまったようです。(サラ系自体は、アングロアラブとの混血や、白毛馬ハクホウクンの血を引く馬などが新たに登場しており、いなくなっているわけではありません。)血の淘汰が進んだ現代においては、ファミリーナンバーが空白の競走馬自体、世界的に見ても珍しいのではないでしょうか(詳しい方いたらぜひ教えてください)。ここまで衰退してしまった系統が再び大舞台に姿を見せるのは、現実的に考えればまずあり得ないのだと思いますが、いつの日か予想もしなかった大逆転を起こしてくれることを夢見つつ、これからも見守っていきたいと思います。
サラ系の子孫は滅亡寸前 (2) バイカ系
【バイカ】
1903年生まれ(1904年とも)。血統だけでなく産国も不明のようでその出自は謎に包まれています。 (2017/2/5訂正:『サラブレッド系種血統書』第一巻によればやはり豪州産のようです) 産駒の第三シヤエロツクが帝室御賞典を制し、そこから血脈を広げました。主な子孫にはワカクサ(阪神3歳S)、ホウゲツオー(京成杯)、ダイホウゲツ(中京記念)、フローカンボーイ(スワンS)、テルノエイト(シンザン記念)、リュウズイショウ(東海ダービー)など。ミラ系やバウアーストツク系に比べると大レースの勝ち馬は少なく華々しさには欠けますが、平成に入ってもタマモハイウェイ(菊花賞5着など長距離路線で活躍)、ハートランドヒリュ(サラブレッド系のJRA最多出走記録)といった面々を輩出してきました。
バイカ 1903
第三シヤエロツク 1920
豊花 1925
トップフライト 1945
ナンバイチバンヒメ 1959
|ハッピーベレン 1968
| テルノワカクサ 1982
| |サツマコムスメ 1989
| | オワリクイン 2000 → サファリプリンセス 2008(牝、地方6勝)
| |ミホアヤメ 1999 → ブラックトーラス 2011(牡、地方1勝)、バージンシャトー 2012(牝、地方1勝)
|センコウミドリ 1969
ウエストマーチン 1977
グランダーム 1992
ユメヲコワサナイデ 2003 → アポロイーグル 2008(牡、地方6勝)、ケイティユウユー 2010(牝、地方10勝)、プリマバレリーナ 2011(牝、地方3勝)
現役競走馬:6頭
現役繁殖牝馬:0頭
ほか、馬名未登録だがミホアヤメの2013年産駒・2014年産駒がいる(2頭とも牝)
現役競走馬の母はいずれも供用停止となっており、系統の存続は現役の牝馬が繁殖入りできるかどうかにかかっています。どれも地方所属なので何とも言えないですが、バウアーストツク系に比べればまだ可能性はあるか。
サラ系であっても8代続けてサラブレッドと交配されれば、サラブレッドとして認定される制度があり(「ヴィークル・メア」)、現役の6頭はみな正式なサラブレッドとして扱われています。その一方で、世代を経ることで系統としての勢いが失われてしまったのは何とも皮肉な話です。最後に紹介するミラ系も似たような状況ですが、サラ系としては最も繁栄した一族の今についてはまた次回、詳しく確認していきたいと思います。(続く)
サラ系の子孫は滅亡寸前 (1) バウアーストツク系
オーストラリア供用種牡馬の血統を少しずつ調べてますが、同じ作業の繰り返しはどうしても飽きてしまうので、気分転換に牝系について調べていました。
興味を引いたのは、ファミリーナンバーの振られていない、所謂「サラ系」のライン。
Wikipediaの「サラブレッド系種」の項に詳しいですが、19世紀末〜20世紀初頭に輸入された血統不明の牝馬を祖とするラインのいくつかは大きく発展し、八大競走の勝ち馬も複数出ました。
しかし21世紀の現在、生き残っている系統は極僅か。というか殆ど滅亡しかかっています。現役の競走馬、繁殖牝馬のいる系統は、おそらく「ミラ系」「バイカ系」「バウアーストツク系」の3つだけ。
これら系統の今を、3回に分けて載せていこうと思います。まずはバウアーストツク系から。
【バウアーストツク(バウアーストック)】
1922年生まれ(資料によっては1923年ともされる)、オーストラリアから輸入。本当は8-e族に遡る正真正銘のサラブレッドらしいが、血統不詳のサラ系として扱われた。
主な子孫に、キタノオー(菊花賞、天皇賞・春)、キタノオーザ(菊花賞)、アイテイオー(オークス)、ヒカリデュール(有馬記念)、キョウワサンダー(エリザベス女王杯)。
■牝系図(現役馬に繋がる分のみ)
バウアーストツク 1922
バウアーヌソル 1938
|キタノヒカリ 1954
| アイテイオー 1960
| |アイテイグレース 1967
| | サニーフィールド 1981
| | キリサニー 1987
| | キリビジン 1992 → コスモハンサム 2008(牡、地方6勝)
| |アイテイマウタ 1970
| シロキタパーク 1977
| イコマパーク 1984
| ローズサーカス 1999 → クリノホテイソン 2011(牡、地方1勝)、キョウエイカオリ 2012(牝、地方未勝利)
|キタノクイン 1958
タカラウイン 1967
キヌウラローズ 1980
キリチャペル 1987
|キリシスター 1996
|キリカツヒメ 1997
現役競走馬:3頭
現役繁殖牝馬:2頭(キリシスター、キリカツヒメ)
繁殖牝馬は2頭いますが、どちらも過去に産駒が1頭も競走馬登録されておらず、おそらく何か別の目的で供されているのだと思われます。そうなるとラインを繋ぐ可能性がある牝馬は現役のキョウエイカオリただ1頭ですが、現在未勝利、かつ昨年2月以来出走なし。まさに滅亡寸前。
こう言ってしまうと身も蓋もないですが、牝系が途絶えるなんてそう珍しいことではなく、サラ系というのは希少ではあっても貴重ではない(むしろ冷遇されていた)わけだから、何も驚くようなことはないのかもしれません。しかしそれでも、昭和の競馬史に名を残した一族がこうしてひっそりと消えていくことに、複雑な感情を抱かずにはいられないわけです。
と、こんな感じでミラ系とバイカ系の生き残りも調べていこうと思います。(続く)
種付け頭数をウイニングポストの血統支配率風に表す(英・愛編)
先日の日本国内編に続き、イギリス&アイルランド編をやってみました。
ソースはWeatherbys Stallion Bookの「ANALYSIS OF 2015 RETURN OF MARES」(http://www.stallionbook.co.uk/pages/index.htmlの左下バナーから閲覧可能)。種付け頭数は「2015 Covering of Registered Mares」と「2015 Covering of Unregistered Names and Unnamed Mares」の合算です。合計で約21,000頭。英・愛のサラブレッド生産頭数が約12,000頭(2014年)なので、ちょっと多いか?サラブレッド以外の種付けが含まれているか、Unregistered/Unnamedの分が余計なのかもしれない。また、手作業の集計なので細かいミスがあるかもしれません。
留意事項として、障害用種牡馬の種付け数も集計に含まれています。かつ、結構数が多いです。Sea the StarsやFrankelよりもKayf TaraやYeatsの方が種付け数が上だなんて意外に思う人もいるでしょうが、日本と同じ基準で考えてはいけないのでしょうね。障害競走の数に対する種牡馬の数が平地に比べると少ないので、1頭あたりの種付け数が多くなるのだと想像されます。障害用種牡馬を除外することは、線引きが難しいと思ったのでやりませんでした。
前置きが長くなりましたが・・・
便宜上ダンジグとサドラーズウェルズは別系統としましたが、仮にノーザンダンサー系で一括りにした場合は76.2%と圧倒的なシェアになります。正直これほどの割合になるとは想像していませんでした。内訳を見ると、
デインヒル、グリーンデザート、ガリレオ辺りはまさに今が旬という感じで勢いのある系統。ほか、日本にはあまり馴染みがないですが、トライマイベストの系統であるAcclamation〜Dark Angelのラインが主に短距離で実績を上げており、一定の勢力を築いています。一方で、かつて栄えたヌレイエフ、ニジンスキー、リファールといった系統は斜陽だと言わざるを得ません。Pivotalを擁するヌレイエフはまだ良いとして、残りの2つは障害用種牡馬が主体になっておりラインの存続はかなり厳しそうです。
他の系統を見ていくと、まずミスタープロスペクター系は意外にもそこそこの比率に収まっている印象。ただしこの先Dubawiの後継種牡馬が続々加わっていくはずで、数年でまた違う状況になるかもしれません。ブランドフォード系はMonsunの後継種牡馬たちが気を吐いておりなかなか健闘しています。ナスルーラ系は小系統に分けるまでもないほどの規模になってしまっています。一応、中心はネヴァーベンド〜ミルリーフの系統。日本では絶対的地位を築いたヘイルトゥリーズン系もここでは今一つ。ディープインパクトとかの産駒が単発で競走馬として入ってきて、そこから根付いていくことに期待でしょうか。
その他マイナー父系は主流系統に押されて非常に厳しい状況ではあるものの、日本ほどの極端な偏りは見せておらず、例えば今年のJack Hobbs(シャーペンアップ系)のように一流馬を送り出す土壌はいまだ残されていると言えます。個人的には、トウルビヨン系というかヘロド系存続のカギを握るDunadenから何とか活躍馬が出てきてほしいと思っています。初年度は97頭に種付けした模様。
次回は、少し日が空くかもしれませんがオーストラリア編を予定しています。デインヒル一強支配の中で、まだ出ていないマイナー父系がどれだけ残っているか?楽しみにして集計したいと思います。
種付け頭数をウイニングポストの血統支配率風に表わしてみた
タイトルの通り。マイナー父系の淘汰がどのくらい進んでいるか確かめたくてやってみた。
・「2015年の種付情報の公開と各種雄馬の種付頭数」(http://www.jairs.jp/contents/archives/2015/56.html)に基づいて集計
・「主な種牡馬」には系統内で最も種付け頭数の多い馬を記載
・系統の分け方はウイニングポスト的にした(サンデーサイレンスを単独の系統とした上でヘイローとロベルトを一緒にするのは若干の違和感があるが)
下位に0.0%で並んでいるのは、いずれも種付け頭数5頭未満の系統(なお、種付け数ゼロの系統は記載の対象としていない)。
それらを除くと、ヘイルトゥリーズン(含むサンデーサイレンス)・ミスタープロスペクター・ノーダンダンサー・ナスルーラの四系統に集約が進んでいるのがよく分かる。四系統以外でまともに稼働している種牡馬は、ノヴェリストとワイルドラッシュ&トランセンド父子だけしかいないという状況。
上位の系統を細分化すると次のようになる。
北米版、イギリス&アイルランド版、オーストラリア版あたりも集計はできるので、いつになるか分からないがやってみたいと思う。
特定の系統に偏る傾向は、どの地域もあまり変わらないだろう、、とは予想しているが、非主流系統のパーセンテージが日本のような壊滅的状況なのかどうかは一度確認してみたいと思っている。